債権者にとって感情的となることは損でしかない
債権者にとって、お金を約束通りに支払わない債務者と接することは強いストレスに他ならず、どうしても感情的になって法的措置をチラつかせたり、感情的になってしまうことは仕方のないことかもしれません。
実際、約束通りに債務を履行しない債務者について法律は債権者に各種の措置を用意しているわけですが、これらはあくまで手段のひとつであり、目的ではありません。
目的は債権の回収であり、そのための手段として法的措置という選択肢があるのです。それぞれの選択肢が効果のあるものかどうかは別の話です。
目的達成のためには最善の手段を講じていかなければなりません。
そもそも、約束通りにお金を払うことができれば金銭トラブルなど起きていないわけです。
つまり、約束を守らないのではなく守れないのが債務者の実情であることを理解しなければなりません。
借用証をはじめとする書面とともに債権をもっていたところで、お金のないところから取ることはできません。
差し押さえる財産があれば話は異なってきますが、このような場合においては債務者もどうにか財産を守ろうと債務の履行に努めることが多いので、金銭トラブルがこじれていくこともレアです。
無い袖は振れないのだから、袖を作らせることを重点に
支払い能力のない債務者を相手取って民事裁判をはじめとする法的措置に出たとしても、ハッキリいって意味のないことです。
裁判所は判決を出してくれるだけであり、公に債権の効力を認める作業をする場所です。回収はしてくれません。
結局、お金のない相手から回収するには、債務者と交渉しながら支払い能力の確認を重ねていくとともに、より詳しい状況を聴取するなどして、債務者自身の支払い能力を増強してやる必要があります。
この作業は法的措置の前に進めていくことができますので、話し合いに応じないなら法的措置もやむを得ないといったスタンスで債務者に交渉へ応じるよう促していきましょう。
債務者の持つ可能性のある他者への債権を把握
結局、ないものはないのだから“すぐには払えない”との言い分に終始されますが、案外と債務者が本来持っている債権について債務者自身が見落としているケースもみられます。
会社を突然クビになって支払える状況でないのであっても、解雇予告手当を受け取っていない場合にはその要求をさせ、受け取ったら自分に払わせるように話すことも可能です。
離婚されて家を追い出され、といった状況であっても、元配偶者との共有財産の分割請求や、慰謝料・損害賠償請求などを債務者におこなわせるよう促していくこともできます。
このように、社会的な立場を失って支払うことのできない債務者でも気付きづらい債権があるものですので、支払うことのできない理由については事細かく聞いていく必要があります。
和解や調停による新規契約を交わして身内からの回収
債務者がどうしても支払わない、債権も持っていないならば泣き寝入りするしかないように思いがちですが、合法的に債務者の家族をはじめとする身内に支払わせる方法があります。
普通に、“この人が払わないので代わりに払ってください!”といったところで、身内の人間といって、連帯保証人でもない以上は支払いに応じないことでしょう。
応じるとすれば刑事事件になる可能性のあるケースくらいです。警察沙汰になるくらいなら、代わりに払ってお金で解決するというパターンです。
つまり、身内の人間を連帯保証人にしてしまえばいいのですが、当初の契約をさかのぼって連帯保証人として名を連ねさせることは難しいので、分割払いによる解決を和解案とした和解契約を持ちかけ、その契約書において連帯保証人欄を設けることが効果的です。
もちろん誰も連帯保証人欄にサインなどしたくないでしょうが、裁判になってより大きな負担を背負うことになりかねないと考えれば、やむを得ずサインしてくれたりするものです。
個人間でのやり取りに不安を感じるようであれば、素直に裁判所にて手続きを進めていき、和解を裁判所に主導してもらうこともおススメです。
金額によって少額訴訟・簡易裁判で済むのか、地裁による通常裁判となるのか進路は異なりますが、通常裁判の場合には時間ばかりかかるので調停という選択肢もあります。
調停による和解でも連帯保証人を求めることができますので、万が一、和解契約内容さえ債務者が守らないようであれば、そのまま連帯保証人からの支払いを受けることができます。
支払わない債務者との交渉では恐喝に注意
立場の強い債権者が注意すべきは自らの言葉が恐喝とならないかどうかです。
過激な言葉を使用すれば、債務者より恐喝罪に該当するとして警察へ相談されてしまうことにもなりかねませんので、常識的な判断をしていくよう心がけましょう。
また、身内に支払いを持ちかけることも、たとえ事前相談のつもりであったとしてもやり方によっては恐喝とされる場合もあります。
これらを考慮したうえでも、債権者が感情的になって短気な言動をしてしまうことは損しか招きませんので、より冷静に対応していくようにしていかなければなりません。